1st Single「オーロラに隠れて」作品紹介

2010年6月23日。メジャー第1弾アルバム『ごめんね、私。』を手に、晴れて大舞台のマウンドに立った十代屈指の──キュートさとインテリジェンスを兼ね備えた──ポップ・シンガー、南波志帆。あれから半年のあいだ、さまざまなハイライト・シーンをリスナーの記憶に焼き付けてきた彼女が今、メジャーでのファースト・イヤーを締めくくろうとしている。

「メジャー・デビューをしたからというわけではないんですけど、最近、本当に音楽が好きになってきたんです。音楽を聴くこともライヴを観に行くのもとても楽しいですし、どんどん色々なものを吸収したいと思ってます。それと同時にライヴをするのがすごく楽しくなってきたんです。自分の不思議なキャラも受け容れられたみたいだし(笑)、いままで苦手だったMCも、最近はどういう話をしようかなとかを考えるのが楽しいんです。もちろん、歌ももっと表現を豊かにしてみようとか……うん、そこはメジャー・デビューしてから意識の面で変わったところですね。やっとライヴの基礎ができてきた感じがしますし、これからもっとがんばろう!って。もう、自分のステージが観てみたいぐらい(笑)」

ファースト・イヤーのトピック、そのひとつが、8月20日に渋谷・duo MUSIC EXCHANGEでおこなわれた初のワンマン・ライヴ<FANTASIC STORY>。多勢詰めかけたファン、そしてプロデューサーの矢野博康をはじめ、これまで楽曲を提供してきたミュージシャンたち(南波志帆曰く、保護者)も一同見守るなかで、彼女は堂々としたパフォーマンスを見せてくれたわけだが、それはまるで、“負ければ終わり”というルールのなかでハツラツと、そして懸命にボールを追いかける甲子園球児の健気なプレイにも似た感動を与えてくれるものだった。ちなみにキリンジの堀込高樹は、そんなパフォーマンスのなかに見え隠れする“危うさ”が魅力だと絶賛し、堀込泰行も「負けた!」と脱帽した……とか。

「もっともっと自分を出していこうってやっていった結果、保護者のみなさんにも誉めてもらって、すごくうれしかったです。なんか、プレッシャーは感じるんですけど、いまはそれをバネにできてる感じなんですね。どんどんかかってこい!みたいな、だいぶイイ感じ(笑)。失敗するのが怖くなくなったし、失敗して転んでいかないと道は拓けないなって」

実は、そんなワンマン・ライヴの数か月前、彼女にとって大きな事件があった。それは6月14日、17歳のバースデーに観に行ったYUKIのコンサート@渋谷・Bunkamura オーチャードホール。

「ホント衝撃的で、身体からパワーが満ち溢れていて、かっこいいし可愛らしいし、私がポップ・シンガーとして理想としている姿がそこにあったんですよ。それから、私自身明確な目標が見えて、意識が大きく変わりました。観て聴いて楽しめるライヴができるように、ステージでの動きをあれこれと考えてみたりとか、ワンマンまではいろいろトライして。それと、9月にYUKIさんのライヴを東京国際フォーラムで観た時は、“ライヴができなきゃアーティストじゃないって初代マネージャーに言われて、その方針で若い頃からライヴをしてきた”みたいなYUKIさんのMCを聞いて、私といっしょだ〜!って。あっ、これって運命?って思い上がっちゃいました(笑)」

南波志帆のメジャー・ファースト・イヤーを締めくくるシングル「オーロラに隠れて」は、その“運命の人”YUKIが作詞を手掛けた楽曲。最新アルバムのタイトル曲「うれしくって抱き合うよ」では奥田健介、小松シゲルといった南波志帆とも縁の深いミュージシャンと共演しているなど、ここに来ての邂逅も、やはり運命としか言い様がない(ちなみに南波志帆は、YUKIがJUDY AND MARYのメンバーとしてデビューした93年に生まれたのだ!)。

「歌詞の世界に出てくる女の子は、とにかくモテる女の子なんで俄然燃えましたね!女の子も憧れる=YUKIさんらしい歌詞だと思いました。ものすごく女子っぽい歌詞でもあるし、プロデューサーからは自分の解釈で自由に歌っていいよって言われて。それで、いままでにはないニュアンスをつけてみたりとか、次はどうアプローチしてみようかなとか、“I Love You”とか“真面目にキスして”っていうフレーズは思いっきり気持ちを込めて、聴いてる人をキュンとさせてやろうかなとか(笑)、いろいろ考えて歌いました。この歌詞は、ちょっと背伸びをしてオトナっぽくなりたいっていう今の自分とすごくシンクロしていたので、素の自分のままで表現できた感じです。YUKIさんの歌詞はものすごく開放感があって、羽根が生えて飛んでいけそうなぐらい、歌っていて楽しかった! もう、YUKIさんと結婚したい!(笑)」

結婚に関してはYO-KINGさんと要相談(笑)……それはともかく、「オーロラに隠れて」でYUKIの詞世界とともに南波志帆のチャームを“ひとつ上”に持ち上げているのは、堀込泰行が紡いだ豊潤なメロディー。ポップ・テイストなソウル感(南波志帆が思い浮かべたのはアバ「Dancing Queen」)が匂う、まさにキリンジ!といったニュアンスをそこかしこに感じさせながら、季節柄、ワム!「Last Christmas」を彷彿とさせるようなファンタジーが織り込まれたそれは、詞の開放感をさらに押し広げる──彼女自身も歌っていて楽しいはずのウキウキに満ち溢れたものだ。そして……。

「今回、ストリングスのレコーディングにも立ち会ったんですけど、ストリングス・アレンジを本間昭光さんがしてくださって、金原千恵子さんに初めて弾いていただいたんですね。音の感じも弾いている姿もすごく女性的で、冬の曲に美しいストリングスが重なって、これはもう名曲になったかも!って(ニッコリ)。これから何年、何十年も聴かれ続けてほしい曲になりました。冬の定番にならないかなあ」

そのカップリングには、DVDシングルとしてはリリース済みの「こえをきかせて」と、この秋から始まったTVアニメ「カルルとふしぎな塔」(本人も声優として出演!)の主題歌になっている「解きかけのパズル」を収録。この曲では14人編成のアコースティック・オーケストラ、パスカルズが演奏と編曲を担当。

「サン、ハイ!で楽器も歌も同時にレコーディングするという、今回初めての試みをした曲なんです。失敗すると演奏が止まっちゃうので、すごく緊張したんですけど、逆にそのプレッシャーがいい方向に働いてくれたと思います。最初、ひとりで仮歌を録った時は明るい感じがあまり出せなかったんですけど、みなさんの演奏と一緒に歌っていたら自然といい声が出て、和やかな感じとかやさしい感じとか、その場のいい雰囲気がそのまま収めることができたかなあって。自分はひとりじゃないんだ、仲間がいるからがんばれる!みたいなことをひしひしと感じた、希望に溢れてる曲ですね」

“ミラクル”なコラボレーションをはじめとする新たなチャレンジを経て、南波志帆のまぶしすぎる“なう”を記録したニュー・シングル「オーロラに隠れて」。作品を重ねるごとに蓄えられていく滋養を、次はどう還元していくのか? 早くも南波志帆のネクスト・シーズンが楽しみになってきた。

久保田泰平

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南波志帆

南波志帆

オーロラに隠れて

「オーロラに隠れて」
2010.12.1 Release
PCCA-03303 / ¥1,250(tax in)

試聴はこちら(MySpace)

1. オーロラに隠れて
 (作詞:YUKI 作曲:堀込泰行 編曲:矢野博康)

2. 解きかけのパズル
 (作詞/作曲:矢野博康 編曲:パスカルズ)

3. こえをきかせて
 (作詞/作曲:おおはた雄一 編曲:おおはた雄一、矢野博康)

4. オーロラに隠れて [Instrumental]